筋トレをすると身体が硬くなる?実は柔軟性も高められる意外な理由
2026/10/28
「筋トレをすると、筋肉が硬くなるんじゃないですか?」
「身体が硬いので、まずストレッチから始めたほうがいいですよね?」
パーソナルトレーナーとして仕事をしていると、こうした質問をいただくことがあります。
確かに、筋肉を鍛えると身体が硬くなりそうなイメージはありますよね。
特に筋肉の大きなボディビルダーなどを見ると、筋肉が邪魔をして身体を動かしにくそうだと感じる人もいるかもしれません。
でも、実際は必ずしもそうではありません。
むしろ最近の研究では、筋力トレーニングそのものが柔軟性を高める可能性が報告されています。
つまり、筋トレは筋肉を強くするだけでなく、身体を動かせる範囲を広げることにも役立つかもしれないんです。
今回は、2026年に発表された新しい研究を中心に、筋トレと柔軟性の関係についてお話ししていきます。
【そもそも「身体が硬い」とはどういう状態?】
まず、柔軟性について少し整理しておきましょう。
一般的に「身体が硬い」と言うと、前屈しても床に手が届かない、開脚が苦手、肩が上がりにくいといった状態をイメージすると思います。
こうした動きに関係しているのが、関節可動域(ROM:Range of Motion)です。
関節可動域とは、その関節をどれくらい動かせるかという範囲のこと。
ただし、関節可動域は筋肉の硬さだけで決まるわけではありません。
筋肉や腱などの組織の特性、関節の構造、神経系の働き、そして伸ばされたときの感覚など、さまざまな要因が関係しています。
例えば前屈が苦手な人でも、必ずしも太ももの裏側の筋肉だけが硬いとは限りません。
骨盤の動かし方が分からなかったり、伸ばされる感覚に慣れていなかったりする場合もあります。
僕がトレーニングを指導するときも、単純に「硬いから伸ばしましょう」と考えるのではなく、どの動きが苦手なのか、その人がどこまで安全に動かせるのかを確認することを大切にしています。
身体を柔らかくするためには、ただ筋肉を引っ張ることだけが答えではないんです。
【2026年の研究で分かった「筋トレでも柔軟性は向上する」】
2026年7月23日、学術誌『Journal of Clinical Medicine』に興味深い研究が発表されました。
この研究では、18〜25歳の身体活動習慣がある男女48人を対象に、ストレッチと筋力トレーニングによる柔軟性の変化を比較しています。
参加者は3つのグループに分けられました。
・ストレッチを行うグループ
・筋力トレーニングを行うグループ
・特別な介入を行わないグループ
期間は6週間。
ストレッチと筋トレは、どちらも週1回のプログラムです。
筋トレのグループでは、ルーマニアンデッドリフトという、太ももの裏側やお尻の筋肉を使う種目を実施しました。
そして6週間後、前屈動作による柔軟性を測定したところ、次のような結果になりました。
ストレッチ群:平均3.93cm改善
筋トレ群:平均1.81cm改善
対照群:平均0.25cm低下
つまり、ストレッチだけでなく、筋トレを行ったグループでも柔軟性の改善が確認されたんです。
ただし、この研究ではストレッチ群の改善幅のほうが数値上は大きくなっています。
また、参加者は若い成人であり、1グループ16人という比較的小規模な研究です。
そのため、この結果だけで「筋トレはストレッチと完全に同じ効果がある」「何歳でも週1回で必ず柔らかくなる」と断定することはできません。
それでも、筋トレにも柔軟性を高める働きがあることを示す、興味深い結果です。
【筋トレで柔軟性が高まるのはなぜ?】
では、どうして筋トレによって身体が柔らかくなるのでしょうか。
重要なのは、筋肉を伸ばしながら力を発揮することです。
例えばスクワット。
しゃがむときには、お尻や太ももの筋肉が伸ばされながら、身体を支えるために働きます。
ルーマニアンデッドリフトでは、股関節を曲げて上半身を前に倒す際、太ももの裏側の筋肉が伸ばされながら力を発揮します。
こうした動作を適切な可動域で繰り返すことで、柔軟性にも変化が生じると考えられています。
実際、2025年3月号の『Journal of Strength and Conditioning Research』に掲載されたメタ解析では、36件の研究、合計1,469人のデータを分析しています。
その結果、筋力トレーニングは関節可動域の改善に有効である可能性が示されました。
ただし、研究間のばらつきが大きく、含まれた研究にはバイアスの懸念もあったため、結果の解釈には注意が必要です。
ここで知っておいてほしいのは、筋トレであれば何でも柔軟性が高まるわけではないということです。
重要なのは、適切なフォームで、無理のない範囲で関節を動かすこと。
重い重量を扱おうとして動作が極端に小さくなったり、反動で無理やり可動域を広げたりするのはおすすめできません。
筋肉を鍛えることと、身体を丁寧に動かすこと。
この二つを両立させるのがポイントです。
【それならストレッチは必要ないの?】
ここまで読むと、こんな疑問が浮かぶかもしれません。
「筋トレで柔軟性が上がるなら、ストレッチは必要ないのでは?」
結論から言うと、ストレッチにはストレッチの役割があります。
2025年に発表された、20人の専門家による国際的な合意文書でも、ストレッチは短期的・長期的な関節可動域の改善に有効であると整理されています。
一方で、筋力トレーニングも柔軟性を高める代替手段の一つとして挙げられています。
つまり、柔軟性を改善する方法は一つではないということです。
僕自身、ストレッチと筋トレを対立するものとして考える必要はないと思っています。
例えば、股関節の動きが悪く、スクワットで十分にしゃがめない人がいたとします。
そういう場合は、いきなり深くしゃがむことを求めるのではなく、まず股関節の動きを確認します。
必要であればストレッチを取り入れ、動かしやすくなった範囲で筋力トレーニングを行う。
逆に、すでに十分な可動域がある人であれば、毎回長時間ストレッチをしなくても、適切な筋トレによってその可動域を維持・改善できる可能性があります。
大切なのは、ストレッチをするか、筋トレをするかという二者択一ではありません。
自分の身体に必要な方法を選ぶことです。
【PROLOGUEのお客様にも「動かすことから始めた」事例があります】
以前PROLOGUEのコラムで紹介した、30代後半のA様。
もともと運動が苦手で、デスクワーク中心の生活を送っていたお客様です。
階段を上るだけでも息が切れ、休日は疲れて自宅で過ごすことが多かったそうです。
最初のトレーニングでは、いきなり重いウエイトを扱うことはしませんでした。
まずは硬くなっていた股関節や胸の周辺をストレッチし、正しい姿勢や身体の使い方を覚えるところから始めています。
その後は週1回のペースでトレーニングを継続。
3ヶ月後には、お腹や背中のラインがすっきりしただけでなく、夕方の脚の重だるさが軽減し、休日も趣味や外出を楽しめるようになったと報告されています。
もちろん、この方の関節可動域を数値で測定した結果が残っているわけではありません。
ですから、「筋トレによって柔軟性が何度改善した」といったことは言えません。
ただ、身体の状態に合わせてストレッチと筋トレを組み合わせ、無理のない運動習慣を作っていった一つの事例です。
僕がトレーナーとして大切にしているのも、こういう部分です。
単純に筋肉を鍛えるだけでなく、その人がどのように身体を動かしているのか。
動きにくい部分はないか。
痛みを我慢していないか。
こうした点を確認しながらトレーニングを進めることで、筋力だけでなく、日常生活での動きやすさにも目を向けることができます。
【柔軟性を意識した筋トレのポイント】
では、実際にどのようなことを意識すればいいのでしょうか。
僕がおすすめしたいのは、次の3つです。
【① 重量よりも動作の質を優先する】
筋トレというと、重い重量を持ち上げることが目標になりがちです。
もちろん、筋力を高めるためには適切な負荷が必要です。
ただし、重量を増やすことでフォームが崩れたり、関節の動きが極端に小さくなったりするのであれば、一度重量を見直すことも大切です。
特に初心者の方は、まず正しいフォームで動作を繰り返せるようになることを優先しましょう。
【② 筋肉が伸びる動作も丁寧に行う】
スクワットでしゃがむ動作。
ダンベルをゆっくり下ろす動作。
ルーマニアンデッドリフトで股関節を曲げる動作。
こうした筋肉が伸ばされる局面も、トレーニングの大切な一部です。
ただし、伸びるほど良いからといって、痛みを我慢して限界まで動かす必要はありません。
あくまでコントロールできる範囲で、丁寧に動かすことが大切です。
【③ 必要に応じてストレッチを組み合わせる】
筋トレだけですべての柔軟性を改善しようとする必要もありません。
例えば肩まわりの可動域が不足している場合は、トレーニング前に軽く動かしたり、必要に応じてストレッチを行ったりするのも良い方法です。
筋トレで鍛える。
ストレッチで動かせる範囲を広げる。
そして、その範囲で筋肉を働かせる。
こうした組み合わせは、運動初心者にとっても取り入れやすい方法だと思います。
【身体が硬いから筋トレできない、は間違い】
「身体が硬いので、柔らかくなってからジムに通います」
こう話される方もいます。
でも、僕は必ずしもその順番でなくていいと思っています。
もちろん、強い痛みがあったり、関節の動きに大きな制限があったりする場合は、医療機関での評価が必要なこともあります。
ただ、単純に運動不足で身体を動かすことに慣れていないだけなら、最初から柔軟性が高い必要はありません。
今できる範囲で身体を動かす。
少しずつ筋力をつける。
必要な部分はストレッチする。
そして、慣れてきたら少しずつ動作の範囲を広げていく。
こうした進め方でも十分です。
むしろ、身体が硬いことを理由に運動を避けてしまうほうが、もったいないと思います。
筋トレは、身体が柔らかい人だけのものではありません。
身体が硬い人でも、自分に合った方法で始められる運動なんです。
【筋トレとストレッチは、どちらも身体を変える手段】
今回の研究を読んで、改めて感じたことがあります。
それは、筋トレの役割を「筋肉を大きくすること」だけに限定する必要はないということです。
筋力を高める。
身体を動かしやすくする。
日常生活の動作を楽にする。
そして、運動を無理なく続けられる身体を作る。
こうしたことも筋トレの大切な役割です。
ただし、筋トレをすれば必ず柔軟性が改善するわけではありませんし、ストレッチが必要なくなるわけでもありません。
僕は、筋トレとストレッチのどちらが優れているかを決めるより、その人の身体に合った使い方を考えることのほうが重要だと思っています。
筋肉を鍛えることと、身体を柔らかくすることは矛盾しません。
むしろ、上手に組み合わせることで、より動きやすい身体づくりにつなげられます。
「身体が硬いから筋トレは苦手」
そう思っていた方は、少し考え方を変えてみてください。
筋トレは、筋肉を強くするだけでなく、身体の動かしやすさを高める選択肢にもなる。
今回の研究は、そんな新しい視点を与えてくれる内容でした。
【参考文献】
① Kaczorowski M, et al.(2026)
Effects of Low-Volume Static Stretching and Full Range-of-Motion Resistance Training on Flexibility in Physically Active Young Adults: A Randomized Controlled Trial.
Journal of Clinical Medicine
公開日:2026年7月23日
論文URL:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42589887/
② Favro F, et al.(2025)
The Influence of Resistance Training on Joint Flexibility in Healthy Adults: A Systematic Review, Meta-analysis, and Meta-regression.
Journal of Strength and Conditioning Research
2025年3月号
論文URL:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39787531/
③ Warneke K, et al.(2025)
Practical recommendations on stretching exercise: A Delphi consensus statement of international research experts.
Journal of Sport and Health Science
オンライン公開:2025年6月11日
論文URL:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40513717/
④ PROLOGUE公式コラム(2026)
「【お客様の声】運動嫌いの30代OLが、PROLOGUEで『週1回の自分へのご褒美』を見つけるまで」
参考URL:
https://prologue-gym.com/column/detail/20260530155029/
【PROLOGUE(プロローグ)】
名古屋市中区錦のパーソナルジムPROLOGUEでは、一人ひとりの身体の状態や運動経験、目的に合わせたオーダーメイドのトレーニングを提供しています。
筋力トレーニングだけでなく、ボディケアやストレッチも組み合わせながら、無理なく続けられる身体づくりをサポートしています。
住所:名古屋市中区錦2-8-25 三富伏見ビル2F
アクセス:地下鉄「伏見駅」「丸の内駅」から徒歩2分
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営業時間:10:00〜22:00
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※本記事は2026年10月時点の研究に基づいて作成しています。研究結果には個人差があり、疾患や関節の障害がある方にそのまま当てはまるものではありません。痛みや可動域の制限が強い場合は、医療機関への相談をおすすめします。
