筋トレは脳にも効く?記憶力・集中力と筋力トレーニングの意外な関係
2026/10/14
「最近、人の名前がなかなか出てこない」
「仕事中、以前より集中力が続かなくなった気がする」
「40代になってから、頭の回転が少し鈍くなったような……」
こんな経験はありませんか?
年齢を重ねるにつれて、身体の衰えを感じることは珍しくありません。体力が落ちたり、疲れが抜けにくくなったり。僕もパーソナルトレーナーとして、そうした悩みを聞く機会があります。
でも、実は年齢とともに変化するのは、筋肉や体力だけではありません。
記憶力や判断力、物事を処理するスピードなど、いわゆる「認知機能」も加齢の影響を受けることがあります。
そこで今回紹介したいのが、筋力トレーニングと脳の働きの関係です。
筋トレと聞くと、筋肉を大きくする、体脂肪を落とす、体力をつけるといった効果をイメージする人が多いと思います。
ところが最近の研究では、筋トレが脳の働きにも良い影響を与える可能性が報告されています。
しかも、この分野の研究は近年かなり進んでいるんです。
筋肉を鍛えると、脳にも良いことがある?
まず知っておきたいのは、脳と身体は別々に働いているわけではないということです。
例えばスクワットをするとき。
足の位置を決め、重心を意識し、姿勢を保ちながらしゃがみ、立ち上がる。
簡単そうな動作ですが、実際には脳から筋肉へ指令が送られ、筋肉や関節からの感覚情報を利用しながら動きを調整しています。
初めて行う種目でフォームがなかなか安定しないのも、こうした運動の制御に慣れていないことが一因です。
繰り返しているうちに、最初は難しかった動作がスムーズになっていく。
これも身体が運動に適応していく過程の一つです。
ただし、「複雑な動きをするから、それだけで記憶力が高まる」というほど単純な話ではありません。
筋トレが脳の働きに与える影響には、運動に伴う神経系の適応や、循環機能、神経の働きを支える物質の変化など、さまざまな仕組みが関係していると考えられています。
そして、その効果を調べた新しい研究が発表されています。
2026年の最新研究で分かった「筋トレと認知機能」の関係
2026年10月号の学術誌『Ageing Research Reviews』に掲載された研究では、健康な成人を対象に、継続的な筋力トレーニングが認知機能へ与える影響を検討しています。
これは複数の研究結果を統合した、システマティックレビュー・メタ解析と呼ばれる研究です。
結果として、筋力トレーニングは全般的な認知機能に加えて、次のような能力の改善と関連していました。
① 実行機能
計画を立てる、状況に応じて行動を切り替える、必要な情報を選んで判断するといった能力。
仕事や日常生活で頻繁に使っています。
② ワーキングメモリ
情報を一時的に覚えながら、その情報を利用する能力です。
例えば電話番号を一時的に覚えたり、会話の内容を頭に置きながら次の話を考えたりする働きですね。
③ 情報処理速度
情報を受け取り、理解し、反応するまでの速さに関わる能力です。
一方で、過去の出来事を思い出すような「エピソード記憶」については、一貫した改善効果が確認されませんでした。
つまり、すべての記憶力が同じように向上するわけではないということです。
また、研究によって運動期間や強度、認知機能の測定方法が異なり、結果にもばらつきがありました。
それでも、筋トレが筋力や筋肉量だけでなく、一部の認知機能にも良い影響を与える可能性が示されたことは、興味深い結果だと思います。
有酸素運動と筋トレ、脳に良いのはどっち?
では、脳の健康を考えたとき、ウォーキングなどの有酸素運動と筋力トレーニングでは、どちらが良いのでしょうか。
この疑問についても、2026年に新しい研究が発表されています。
5月に『Frontiers in Public Health』に掲載されたメタ解析では、運動習慣の少ない成人2,187人を含む17件のランダム化比較試験を分析しています。
その結果、認知機能への効果は運動の種類によって異なる可能性が示されました。
全般的な認知機能については、有酸素運動と筋トレなどを組み合わせた運動が有望でした。
一方、実行機能については、有酸素運動が良い結果を示しています。
ただし、研究の一部では根拠の確実性が低く、運動の種類による優劣を断定できる段階ではありません。
僕は、この結果から無理に一つを選ぶ必要はないと思っています。
筋トレで筋肉を鍛える。ウォーキングなどで心肺機能を維持する。
どちらか一方ではなく、両方を生活に取り入れる。
身体の健康だけでなく、脳の健康を考えるうえでも、こうした組み合わせには意味がありそうです。
「筋トレをすれば認知症にならない」は言いすぎ
ここは誤解しないでほしいところです。
今回紹介した研究は、筋トレによって認知機能の一部が改善する可能性を示しています。
しかし、だからといって、
「筋トレをすれば認知症にならない」
「筋肉を増やせば記憶力が必ず回復する」
というわけではありません。
認知症には加齢や遺伝、血管の健康状態、生活習慣など、さまざまな要因が関係しています。
運動だけですべてを予防できるわけではないんです。
ただ、世界保健機関(WHO)は、認知機能が正常な成人に対して、認知機能低下のリスクを減らすための身体活動を推奨しています。
つまり、運動は将来の脳の健康を考えるうえでも、取り組む価値のある生活習慣だということです。
トレーナーとして感じる「身体が動くようになること」の価値
僕がパーソナルトレーニングで大切にしているのは、体重や筋肉量といった数字だけではありません。
それまで難しかった動作ができるようになる。
以前より階段を楽に上れるようになる。
仕事終わりでも、少し身体を動かそうと思えるようになる。
そんな日常生活の変化も、トレーニングの大切な成果だと思っています。
以前PROLOGUEのコラムで紹介した30代のお客様も、もともとは運動がかなり苦手な方でした。
デスクワーク中心の生活で、階段を上るだけでも息が切れ、休日は疲れて家で過ごすことが多かったそうです。
そこで、無理のない強度からトレーニングを始め、週1回のペースで継続していただきました。
3ヶ月後には、お腹や背中のラインがすっきりしただけでなく、休日を寝て過ごすことが減り、趣味や外出を楽しめるようになったと報告されています。
もちろん、このお客様の記憶力や認知機能を検査したわけではありません。
今回紹介した研究の効果を、そのまま証明する事例ではないんです。
ただ、身体を動かせるようになったことで、日常生活の活動範囲が広がったことは確かです。
僕はこうした変化にこそ、トレーニングの価値があると感じています。
身体を鍛えることは、単純に見た目を良くするためだけではありません。
自分の身体を使って、これからの生活を楽しむための準備でもあるんです。
脳の健康も考えるなら、どんな筋トレをすればいい?
では、実際にどんなトレーニングから始めればいいのでしょうか。
今回の研究だけでは、「この種目を何回やれば認知機能が改善する」という具体的なメニューまでは決められません。
ただし、健康づくりを目的とした一般的な筋力トレーニングであれば、まずは全身の主要な筋肉をバランス良く動かすことがおすすめです。
例えば、次のような種目です。
① スクワット
太ももやお尻など、下半身の大きな筋肉を鍛える運動です。
椅子から立ち上がる動作に近く、日常生活との関係が分かりやすい種目でもあります。
② チェストプレス
胸や腕を中心に鍛える種目です。
物を押す動作に必要な筋力を高めることができます。
③ ローイング
背中を中心に鍛える種目です。
物を引き寄せる動きで、上半身の筋力維持に役立ちます。
これらはあくまで一例ですが、最初から難しい種目を選ぶ必要はありません。
週2回程度を目標に、正しいフォームで無理なく始める。
最初から週2回が難しければ、まず週1回から習慣を作っても構いません。
慣れてきたら少しずつ負荷や回数を増やしていく。
僕は、そうした段階的な進め方が大切だと考えています。
40代・50代からでも遅くない
「脳の健康」と聞くと、60代や70代になってから考えるものだと思うかもしれません。
でも、健康づくりは何歳から始めても意味があります。
40代・50代は、仕事や家庭のことで忙しく、自分の身体のことを後回しにしがちな年代です。
気づけば体力が落ち、休日に何もする気が起きなくなっていた。
そうなる前に、少しずつ身体を動かす習慣を作っておく。
将来の健康を考えるなら、これだけでも十分価値があると思います。
そして、もう一つ大切なのは、運動を必要以上に難しく考えないことです。
毎日ハードな筋トレをする必要はありません。
重いバーベルを持ち上げなければ効果がないわけでもありません。
まずは自分に合った運動を見つけ、継続していくこと。
運動に慣れていない方こそ、正しい身体の使い方を知るところから始めてほしいと思います。
筋トレの目的は「筋肉を増やすこと」だけじゃない
筋トレと聞くと、どうしても見た目の変化に注目しがちです。
もちろん、筋肉がつくことや体型が変わることも、大きなメリットです。
でも、それだけではありません。
以前より疲れにくくなる。
重い荷物を持つのが楽になる。
旅行や趣味を楽しめる体力がつく。
そして今回紹介した研究のように、脳の働きにも良い影響を与える可能性がある。
こうして考えると、筋トレは単なるボディメイクの手段ではなく、これからの人生を健康的に過ごすための習慣とも言えます。
僕がトレーニングを通じてお客様に提供したいのも、筋肉だけではありません。
何歳になっても、自分の身体で好きなことを楽しめる生活。
そのために、今できることを少しずつ積み重ねていく。
今回の研究は、筋トレを続ける理由がまた一つ増えたと感じられる内容でした。
筋肉のためだけではなく、脳の健康のためにも。
今日から少し、筋トレを見る目が変わるかもしれませんね。
参考文献
① Molloy G, et al.(2026)
The effects of multi-session resistance exercise on cognitive function in healthy adults: A systematic research review and meta-analysis.
掲載誌:Ageing Research Reviews
オンライン公開:2026年7月27日/2026年10月号
② Shao Y, Long X.(2026)
Effects of exercise interventions on cognitive function in sedentary adults: a systematic review and network meta-analysis.
掲載誌:Frontiers in Public Health
公開日:2026年5月14日
③ Exercise-only interventions and exercise-based multidomain lifestyle interventions to promote cognitive function in older adults without dementia(2026)
掲載誌:British Journal of Sports Medicine
2026年9月公開
PROLOGUE(プロローグ)
名古屋市中区錦のパーソナルジムPROLOGUEでは、初心者から経験者まで、一人ひとりの身体の状態や目的に合わせたトレーニングを提供しています。
筋力トレーニングだけでなく、ボディケアやストレッチも組み合わせながら、無理なく継続できる健康づくりをサポートしています。
住所:名古屋市中区錦2-8-25 三富伏見ビル2F
アクセス:地下鉄「伏見駅」「丸の内駅」から徒歩2分
電話:052-990-4360
メール:prologue.gym@gmail.com
営業時間:10:00〜22:00
定休日:日曜日
WEB:https://prologue-gym.com/
無料体験トレーニング受付中。
※本記事は2026年10月時点の研究・公的情報をもとに作成しています。認知機能への影響には個人差があり、運動によって認知症を確実に予防・治療できるという意味ではありません。物忘れが急に増えた場合や、日常生活に支障がある場合は、医療機関へご相談ください。

